■人間が悩む三大原因
先日読んだ「お金2.0」は、主にこれからの「お金」や経済システムについてのお話です。
「お金 2.0」 資本主義の先にあるもの
この本の中で
人間が悩む三大原因として「健康・人間関係・お金」が挙げられていました。
「お金2.0」の主題とは直接関係はないのですが、これけっこうおもしろいなと思って、自分の立場でいろいろと考えてみました。
まずは健康の悩みから。
■医学生・医師・医療系従事者にとっての健康の悩み
このブログの読者は医学生・医師が多いので、そういう目線でまずは考えてみます。
生活習慣病など、自分の日ごろの行いのせいでなってしまう病気もありますが、どれだけ健康に気を遣っていてもかかってしまう病気もあります。
生まれながらに(遺伝的・先天的に)病気を持っていることもあるでしょう。
そういう意味で、病気の多くは誰しも避けることができません。
加齢とともに、人間どこかしら調子が悪くなるものです。
しかし私たちは医療の専門家であり、健康に関しては圧倒的なアドバンテージがあります。
なにか病気にかかっても、すぐに医学書から正しい知識が得られます。
世界最先端の治療が知りたければ、論文や海外サイトに簡単にアクセスできます。
英語ができれば、さらに容易に情報は入手できますね。
【医学英語】医師におすすめの英語学習教材・勉強法 まとめ
その分野の名医・良医だって、同僚や先輩・後輩に聞けば容易にたどり着くことができます。
私たちは、医療・健康に関しては圧倒的な情報強者です。
人並みの悩みはあるでしょうが、「分からない」ことに対する不安は一般の方より限りなく少ないです。
私たち医師は、持ち前の知識や人脈ネットワークを駆使することで、健康の悩みは最小限に抑え込むことが可能です。
たとえば私だって幼少期はアトピーに悩まされていましたが、皮膚科医の知り合いの助言などを駆使して、コントロールできるようになりました。
アトピーで苦しむ同志へ贈る:アトピー性皮膚炎のライフハックまとめ
日々の勉強や診療を頑張ること。
これは目先・将来の患者さんの利益に直結する努力ですが、まわりまわって自分や自分の身の回りの人もきっと助けることができるはずです。
私たち医療従事者は、ただ粛々と、自分の知識やスキルを高めていきましょう。
医学生⇒研修医⇒若手医師 おすすめ本まとめ
■非医療系の方にとっての健康の悩み
「有名」な医師・「偉い」医師は名医なのか?
一般の方は、私たち医師のような専門知識を有していません。
誰が名医なのかは分からないし、「雑誌に載っている名医」「メディアで取り上げられている名医」は必ずしも「真の意味での名医」ではありません。
臨床能力に関わらず、お金を払えば名医として取り上げてくれるメディアもいくつもあります。
それに、肩書きの立派な医師が治療も優れているかというと、必ずしもそうではありません。
医師の出世には基礎研究の成果が重要であり、それは臨床能力とはかなり方向性の違うものだからです。
これは私たち医師からすれば常識なのですが、世間一般の方は肩書きが立派=医師として「臨床の腕」がいい、と思っている人が多いです。
基礎研究の能力 と 臨床能力 は、相関するとは限りません。
というか、逆相関することすらあります。
無名な医師のほうが、××教授よりもはるかに手術がうまいことだって往々にしてあります。
メディアは本当に国民の健康を願っているか?
週刊誌の特集やムック本、健康番組なんかも鵜呑みにはできません。
医療従事者からすればとんでもないウソ情報を、さも正しいかのように載せている本をこれまでイヤというほど見てきました。
なぜかというと、メディアにとっては読者が健康になるよりも、雑誌が売れる・視聴率が取れることの方が大事だからです。
HPVワクチン問題しかり、タミフル異常行動問題しかり、近藤理論しかり。
もちろん崇高な精神のメディアも中にはあると思いますが、すべてがそうとは到底思えません。
健康関係・医療関係の本は国民の関心が高く、派手でキャッチーなタイトルにするとよく売れるので、これまでにも何度も何度も出版されています。
これらの本は、実際にはすばらしい名著なのかもしれません。
少なくとも部分的には正しいことも書いてあるようです。
しかし一部の限られた状況だけを誇張したり、そもそも頓珍漢な理論だったり、論理を差し替えて・飛躍させて違う結論に導いたり。
科学的に結論が出ていない問題を、勝手に一方的な主張で決めつけてしまうケースもあります。
なまじっか部分的に正しかったりするために、「信者」になって妄信してしまう人もいます。
たいていの本は、医療のプロフェッショナルからすると内容は極めて貧弱で失笑ものです。
私もばかばかしくて、いちいちすべてには目を通していません。
(でもたくさん売れるんだから、おそろしいです)
もちろん、薬はいつだって味方なわけではありません。
薬は本来「毒」であり、薬の副作用に苦しむ人もいます。
私もいくつか記事にしたことがありますね。
「くすりはリスク」その薬、飲んでも大丈夫?
【恐怖】くすりはリスク:市販の風邪薬で発症する超重症の眼疾患
ステロイドは悪魔の薬? 眼科とステロイドの複雑な関係
結局「薬を使うことによるメリット・デメリット」を考えながら、ケースバイケースで私たち医師は治療方針を決めています。
薬が役に立つこともあれば逆に害になることもありますが、商業主義に踊らされて医療の専門家の意見を無視する、というのは残念なことです。
何を信じるかは本人次第ですが、世の中にはとんでもないおかしな話が、さも当たり前のような顔をしてたくさん転がっています。
情報溢れる現代社会では、正しい情報を取捨選択する能力が必要
不適切な情報に踊らされないこと。
これは一般の方が健康の悩みを不必要に増幅させないためにできる、一番確実な方法だと思います。
正しい知識をつけることは時間がかかりますが、誤った知識をブロックすることは心がけ次第で誰にでもできます。
誰の、どういった立場からの情報なのか。
他の有識者も賛同しているのか。
妙な利害関係はないのか。
週刊誌やお昼の情報番組、エセ健康番組、インターネットサイトは信じるのに、目の前の担当医の話は信じない。
雑誌の記者や芸能人(非医療関係者)の言うことは聞くのに、医師免許を取りその専門分野で日々診療に当たっている専門医の意見は聞かない。
私たちからすると理解に苦しむのですが、そういった方が少なからずいます。
情報が溢れているからこそ、情報の波に飲まれずに正しく取捨選択をする能力は、健康問題に限らず重要です。
■人間が悩む、その他の三大原因
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人生の悩みは3つに分かれる ②お金の悩み
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