医学生はとても忙しいです。
授業や実習は年々厳しくなり、OSCEなど実技試験も拡充傾向です。
医学部クラブに入っている人も多いし、アルバイトもあるでしょう。
時間は有限ですから、勉強は要領よくやりたいものです。
そこで私が医学生時代に実践していた、基礎医学の学習方法を伝授します。
もくじ
■生物選択でなければ、はじめに大きなビハインドを背負う
大学によりますが、理科二科目受験の人が多いと思います。
その中でも化学・物理を専攻した人がマジョリティです。
私もそのうちの一人で、大学受験当時は生物に関してまったくの素人でした。
しかし、大学に入れば容赦なく生物学関係の講義・実習も入ってきます。
細胞生物学を筆頭に、基礎医学は生物の知識がベースになっています。
そういう意味で、化学・物理選択の受験生は、大学入学後にしばらく苦労することになります。
私も、大学の先生が生物の知識を当たり前のように駆使するので最初は戸惑いました。
もちろん生物選択者でも、高校レベルと大学レベルには差があります。
多かれ少なかれ、大学入学後にはそのギャップに驚き戸惑うでしょう。
※余談
大学受験は物理選択の方が有利なことが多いです。
「原理・原則」をマスターすれば、数学と同様に少ない勉強時間で高い得点が得られます。
また暗記事項は少ないので、一度概念を理解すれば復習もさほど時間がかかりません。
物理or生物の選択は、大学入試で苦労するか大学入学後に苦労するか、の違いです。
なかなかおいしいとこどりはできませんね。
■大学指定の教科書(成書)は難しい
大学の講義ではたいていの場合、教科書や参考図書が指定されます。
それをベースに勉強していくよう指導されます。
ただ、その教科書が初学者にとっては難解なのです。
大学の教官で大学生の気持ちの分かる人なんて皆無 (失礼w だけど真実) なので、生物未履修の大学生の心境なんてわかるはずがありません。
何十年も同じことを教えていると、自分がビギナーだったときの記憶は忘れ去ってしまいます。
ろくに生物を分かっていないのに、難しい基礎医学の教科書を最初から理解するなんて到底無理な話です。
しかし最終的にはその教科書を読みこなせるようになっておかなければいけません。
スタート地点では無理でも、ゴール地点では理解できている必要があります。
ではそのための最短ルートをとるには、医学生はどのように勉強すればよいのでしょうか。
■無知な自分と難解な教科書とのギャップを埋める
まったくその分野の知識を持っていない自分と、難解な教科書との間にある大きなギャップを埋めなければいけません。
そこで有用なのが、一般向け書籍や入門用の参考書です。
ここではおすすめのシリーズを3つ挙げておきます。
新しい科目を習うとき、私はたいていこの3種類の中から1~2冊ピックアップしておいてなるべく早い段階で読んでいました。
かなり平易な文章で書かれているので、さくっと読み終えることができます。
値段もさほど高くないので、手を出しやすい点もgoodです。
この入門書を読んでいるか否かで、授業の吸収速度が全く違います。
授業が始まり次第速やかに、あるいは授業が始まる前に目を通しておくだけで理解力にかなりの差が生まれます。
限られた時間を有効に使い、同じ授業から少しでも多くのことを吸収するように気を付けましょう。
授業中だけでも基礎医学をしっかり身につけておけば、試験勉強は最低限で済みます。
そしてきちんと理解した概念は、臨床医学でも役に立ってきます。
基礎医学の時代を暗記で乗り切ってしまうと、臨床でも暗記頼みになりのびしろが限られてしまいます。
学年が上がるにつれて苦労するパターンに陥ります。
■①「好きになる」シリーズ
まずは①「好きになる」シリーズです。
当記事執筆時点でのラインナップは以下の通りです。
生物学
ヒトの生物学
生化学
分子生物学
免疫学
微生物学
生理学
生理学ミニノート
解剖学ミニノート
栄養学
睡眠医学
漢方医学
病理学
薬物治療学
どれも分かりやすくてオススメなのですが、個人的にはとくに「好きになる免疫学」を推します。
日本の誇る偉大な科学者、故・多田富雄先生が監修されています。
「自己」と「非自己」という概念を通して、免疫学の原理・原則を理解することができる名著です。
私は下級生の頃は何度も読み直しました。
免疫学は多くの疾患を理解する基礎となるため、医学生のうちにきちんとマスターしておいたほうがよいです。
内容が若干古いのが玉に疵ですが、そこは成書や講義での学習でカバーしましょう。
なお「好きになる~」シリーズは臨床医学もいくらかカバーしているので、医学科上級生でも参考になる本があります。
以下のようなラインナップがあります。
麻酔科学
救急医学
精神医学
■②「休み時間の」シリーズ
お次は②「休み時間の」シリーズです。
当記事執筆時点でのラインナップは以下の通りです。
免疫学
微生物学
薬理学
薬事法規・制度
物理化学
生化学
解剖生理学
薬物治療学
生物学
「好きになる」シリーズと並ぶ、入門書です。
どれも分かりやすく、初学者にうってつけです。
その中で私のお気に入りは生化学です。
生化学は、丸暗記しようとすると地獄です。
しかし化学的側面から現象を理解するよう心掛ければ、暗記は最小限で済みます。
そして生化学は、薬理学を含め臨床的知識のバックグラウンドになります。
医学生の早い段階で生化学の知識が整理されていれば、それ以降の学習も捗ります。
■③「マンガでわかる」シリーズ
最後は③「マンガで分かる」シリーズです。
当記事執筆時点でのラインナップは以下の通りです。
分子生物学
生化学
基礎生理学
有機化学
免疫学
薬理学
栄養学
統計学
マンガ主体なので、今回紹介する3種類のシリーズの中では最もとっつきやすいです。
イラストがあまりにかわいらしいので、電車やバスの中ではちょっと読むのがはばかられます笑
有機化学や統計学など、上の2シリーズでは取り扱いのないものもカバーしてあるのがうれしいですね。
他にも工学系の本も豊富なので、数学や工学系などの難解な講座を一般教養科目で履修しないといけない人には役に立つと思います。
>>>「マンガでわかる」シリーズ Amazonで探すならこちら
ちなみにアメリカに留学したとき、「マンガでわかる統計学」の英語バージョンが書店にデカデカと陳列されていましたw
アメリカでも人気なのかもしれません。
■基礎医学を効率よく勉強するコツ まとめ
大学が要求する基礎医学のレベルと、医学生の知識には大きな解離があります。
その差を本格的な教科書で埋めるのはなかなか大変で、効率的ではありません。
今や市販の良書は安価で入手可能ですから、それらを上手に活用することで知識レベルのギャップを埋めて、基礎医学の要点を要領よく吸収することができます。
また今回紹介したシリーズの他、「ブルーバックス」シリーズ等も名著が多くおすすめです。
理科が好きで意欲的な高校生なら、ブルーバックスを何冊か読んだことがあるかも知れません。
私が読んだことのある本の中でとくに優れているものに関しては、またいずれご紹介します。
後日追記
おまけ
一通り勉強し終わり、知識が定着すればこれらの入門書は自分にとって必要なくなります。
不要なものをいつまでも持っていても仕方ないですから、そういう場合はお金に変えてしまいましょう。
医学系の専門書を扱うのが得意な買取業者に上手に頼むのがコツです。
売られた本はお金に変わり、しかも本自体はどこかでまた誰かの役に立つのです。
使い終えた医学書を高く売るコツ:廃棄本すらもお金に変えよう
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