眼科医がおすすめする、コンタクトレンズの選び方! 恐ろしい合併症を防ぐためには


アジアを中心に、近視は増加の一途をたどっています。

それに伴いコンタクトレンズの市場も拡大し続けています。
外来をしていると、コンタクトレンズを新規に希望する若い患者さんが目立ちます。

たくさんの種類のあるコンタクトレンズですが、どういったものを選べばいいのでしょうか。
現役眼科医ならではの目線で、選び方を指南します。

■恐ろしいコンタクトレンズの合併症

コンタクトレンズは、適正に使用していれば問題を起こすことはほとんどありません
私自身も強度近視でコンタクトレンズを使用していますが、トラブルに見舞われたことはありません。

しかし使い方を誤っている場合・商品選択を誤っている場合に重大な合併症をきたす可能性があります。
コンタクトレンズを使用する人は、そのことを知っておく必要があります。

■重大合併症① 感染性角膜炎


洗浄操作を怠っていた、2weekなのにそれ以上使っていた、不潔な手のまま付け外しをした などで、眼の表面に感染症を起こした状態です。

眼の充血や痛み、見えにくさが強く出るため、みなさん慌てて眼科を受診します。

点眼治療を行いますが、重症の場合には点滴を併用することもあります。
それですべてよくなればいいのですが...うまく治すことができても、その後も角膜が混濁したまま残ることが多いです。

前途洋々の若い高校生・大学生が、今後一生涯視力が0.5 などという人を外来で診るたび、やるせない気持ちになります

■重大合併症② 角膜内皮減少


角膜の一番内側に角膜内皮細胞という細胞が並んでいます。
この細胞は回復力がないために、一度ダメージを受けると元には戻りません

角膜への酸素・栄養が不十分だと、この角膜内皮細胞が徐々に傷付いていきます。
コンタクトレンズは眼の表面を覆ってしまうので、多かれ少なかれ角膜への栄養を減らしてしまい、長い時間をかけて角膜内皮にダメージを蓄積していきます。

そしてもっとも恐ろしいの、内皮細胞がダメージを受けても、最後の最後まで見え方に異常が出ないことです。
自覚症状がないために、知らない間にどんどん進行してしまいます。

装着時間が長い人、酸素を通しにくいレンズを使っている人、コンタクトレンズをつけたまま眠ってしまう人は要注意です。
健康な人に3000あるこの細胞が500になったとき、突然Xデーが訪れます

重大合併症①感染性角膜炎は眼科受診時に説明を受けると思いますが、重大合併症②角膜内皮減少まできちんと教えてくれる眼科は少ないです。
私が外来で説明しても「初耳です」という人が多いですね。
知名度は低いですが、上述の通り必ず知っておくべき重要な合併症です。

■合併症を踏まえたコンタクトレンズ選び

合併症①感染性角膜炎への対策

合併症①感染性角膜炎を防ぐためには清潔なものを使う必要があります。
そこで眼科医は、ワンデーを強く推奨します。
毎日新品のレンズを使えば、感染症の可能性は劇的に低下します。

重症の角膜感染症の多くは2weekレンズを使用していて、細菌検査をするとたいていコンタクトレンズそのものや、洗浄ケースから多量の菌が見つかります
市販のレンズ洗浄液の殺菌作用が不十分なのではないかという報告もあり、眼科医としてはワンデー一択です。

レンズ費用は2weekよりかかってしまいますが、洗浄液などのコストを含めるとその差は縮まります。

何より眼というとても大事な臓器に対して、安物買いの銭失いをするのはあまりに寂しいし、合併症発生時の後悔は測り知れません。

合併症②角膜内皮減少への対策

酸素透過率のよいコンタクトレンズを選ぶことが、角膜内皮を守ることになります。
そうすると、現状の商品の中では「シリコンハイドロゲル」製のものが圧倒的に優れます

女性を中心にサークルレンズやカラコンが流行していますが、あれらは色をレンズにつけることでその分酸素が通過しにくくなっており、眼科医としては推奨できません
見せかけの美容よりも、大事にすべきことがあると考えます。
(美しさを求める若い女性を前に、堂々とそう言える眼科医は少ないのですが...)

■どのコンタクトレンズを具体的に選ぶべきか

とにかく上記の二大合併症を防がなければいけません。

【合併症① 感染性角膜炎】を防ぐためには ワンデー
【合併症② 角膜内皮減少】を防ぐためには シリコンハイドロゲル製

選ぶべきですが、実はこれらを2つとも満たす現行ラインナップのものはたったの3種類に限られます
3種類それぞれに少しずつ個性があるので、この中から試してみることを強く勧めます。

専門的には含水率・レンズ形状等いろいろなスペックがあるのですが、それらは省いてざっくりした印象(患者さんや私自身の使用経験)を記していきます。
性能的にはこの3種類ならどれを使用しても、眼にやさしい、素晴らしい選択です。

デイリーズトータルワン アルコン社

他より値段が高めですが、その分装用感がよく眼の乾きも非常に少ないです。

ワンデーアキュビューオアシス ジョンソンエンドジョンソン社

①と③の間で、コストと付け心地のバランスが良いレンズです。

マイデイ クーパービジョン社

保水性が高く、UVブロック加工もされています。
ファンも多いですが、異物感が少し気になるという人もいます。

■眼科医の勧めるコンタクトレンズまとめ

コンタクトレンズは近視の人にとって素晴らしい発明ですが、恐ろしい合併症が起こりえます。

しかし「適切」なコンタクトレンズを「適切」に使えば過度の心配は要りません
自分の眼を自分で守るためには、きちんとコンタクトレンズを取り扱うことが最重要ですが、どのレンズを選択するかも大事です。

ちなみに私は職業柄、市場調査を兼ねて様々なレンズを試し買いしていますが、いろいろ試してみた結果・・・

デイリーズトータルワン と ②ワンデーアキュビューオアシス

を適宜使い分けています。

マイデイは異物感が気になって個人的には合いませんでした。

人によって合う・合わないがあるかと思います。
私の眼にフィットするレンズが、他の人の眼にフィットするとは限らないので。

たとえば初めての方は、まずは①②③を1つずつ購入して、日を分けたり左右を変えたりしていろいろ使ってみて、好みの1枚を見つけてみるのが簡便でおすすめです。
私も新しいレンズを買って試してみるときは、こうやって時間的・空間的比較をよくします。

また眼科医はたとえふだんコンタクトレンズユーザーであったとしても、自分の眼を守る工夫としてコンタクトレンズの「休息日」を設けます。

決まった曜日や外出しない休みの日など、週に1-2日程度コンタクトを使わない日を作ります。こうすることでさらに眼への危険を減らすことが可能です。

誰も教えてくれませんが、眼科医的には常識です。コンタクトレンズを使いながらも眼を愛護できるテクニックなので、併せてぜひ実践してください。

若者に多いのですが、眼鏡を作らずにコンタクトレンズだけで過ごすのは絶対にNGです。
必ず眼鏡は用意しましょう。

眼鏡を購入する際の参考記事はこちら↓

また、「どの眼科に通えばいいかわからない」「どの眼科がいいかわからない」という疑問に対しては、以下のnoteが最適です。
眼科医だからこそわかる、いい眼科の選別方法を伝授します。
業界の裏事情やカラクリに言及しておりオープンなブログでは書けない内容のため、クローズドなnoteの形で出しました。

>>>眼科医がホンネで教える、良い眼科の選び方ガイド!

 

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11 thoughts on “眼科医がおすすめする、コンタクトレンズの選び方! 恐ろしい合併症を防ぐためには

  1. さこち

    はじめまして、神戸に住むOLです。
    この記事、とても勉強になりました。今2weekコンタクトレンズを使っているので、これからはKoala先生おすすめの1dayにしようと思います。
    お仕事お忙しいと存じますが、どうぞ無理せずご自愛くださいませ。
    (私も婚活中です、、、)

    返信
    1. Dr. Koala 投稿作成者

      コメントどうもありがとうございます。ご近所さんですね◎

      ぜひ「1day」の「シリコンハイドロゲルレンズ」にしてください!
      コンタクトレンズは素晴らしい商品ですが、時折誤った使い方で大変なことになる人を診るので。。
      若い人ほどコンタクトを使用するので、将来が明るい分なおさら残念な気持ちになります。

      婚活とてもツライですが・・・お互い頑張りましょう><
      またここにも遊びに来てくださいね。

      返信
  2. T

    はじめまして。福岡に住むTと申します。

    コンタクトレンズの選び方の記事、おすすめのレンズがその理由とともに記されており、たいへん参考になりました。

    ご相談があってコメントさせていただきました。

    現在、私はハードコンタクトレンズを使用しております。昨日、レンズが割れてしまったため、買い替えをしようとしているところです。Koala先生としてはやはりハードレンズよりワンデーのソフトレンズがおすすめでしょうか?また、もしハードを使い続ける場合、Dk値が150以上あるような、酸素透過性の高い物を選べば良いでしょうか?

    ご多忙中恐縮ですが、ご助言いただけましたら幸いです。

    参考
    ・29歳男性
    ・高校生の時からハードレンズを使用
    (当初、ソフトレンズを試したが、レンズを付けるのに時間がかかった(レンズがなかなか眼に入らなかった)こと、装用時に違和感を感じたことからハードレンズに切り替えました。それ以降、ソフトは使っていません。)
    ・度数 左右とも-11.50D、乱視あり

    返信
  3. T

    新年早々、ご丁寧に回答いただきまして、誠にありがとうございます。
    たいへん参考になりました。

    PS 眼科以外にもいろいろな記事を書いて情報発信されているんですね。
    ツイッターを拝見していたら、見覚えのあるツイート(クリスマスイブの事件)があって、そのツイートは、このサイトを見つける前にたまたま自分のタイムラインで読んだものだったので、びっくりしました!(私も婚活と資産運用(インデックス投資)をがんばり中です(^^))

    返信
    1. Dr. Koala 投稿作成者

      ソフト・ハードそれぞれにメリット・デメリットがありますから、状況に合わせてベストなものを使うのがよいですね!

      ツイートご覧になられていたんですね。イブはひどい目に遭いました。。笑
      信じられない数のいいね・リツイートをいただいて、ずいぶんと元気づけられました。

      年齢も近いし、同じライフステージにいるのでしょうね。
      医師向けのコンテンツも多いですが、医師でなくとも役に立つものもあるので、よかったらまた覗きに来てください^^

      返信
  4. そら

    ご回答ありがとうございます。

    ハード歴が長く最近ソフトも使うようになり現在は併用しておりますが眼瞼下垂というものを初めて知りました。
    ハードだとリスクが高いということですが、その理由について教えて頂けませんか?
    私の認識ではハードを外す時に目尻を引っ張るからかと思ったのでスポイドを購入しました。
    これで安心していたらこちら記事の回答の中に瞼のこすれも原因と書かれてありました。
    通常のまばたきでの擦れも原因になるのであればハードを使うこと自体が眼瞼下垂のリスクに直結するということになりますので心配になってきました。

    ・取り外しの時の目尻の引っ張り
    ・まばたきによる瞼の裏のこすれ

    2点ともリスクなのでしょうか?
    どちらかのリスクがより危険?

    など、眼瞼下垂の原因について教えて下さい。コロナ状況のなかお忙しいとは思いますがお時間ある時で結構ですので何卒よろしくお願い致します。

    返信
  5. 匿名

    このような眼科医師が執筆された記事を拝見でき、大変有難く、また嬉しく思います。
    知識不足ないち素人として、また、コピペなど、情報の誤りが起こりうるネット社会という場での情報収集をする身として、そうした不安が大変和らぎました。
    同時に、この度紹介して頂いだ知識を知らずに過ごしてしまった、社会の構図に怒りを覚えたりもしました。なぜ、このような危険性に関する情報に、使用者は触れることなく使用してしまうのか。つまり、あの時の眼科医師は、全てと無理は言わずとも、触りだけでも教えてくれなかったのか。
    今回、危険性と有益な情報を頂いただけでなく、自らが情報収集していく姿勢の必要性を感じさせてもらいました。大変感謝いたします。

    返信
    1. Dr. Koala 投稿作成者

      コメントありがとうございます!

      巷のコンタクト眼科できちんと説明しているところは、必ずしも多くないようです。
      コンタクトレンズの危険性を伝えることは、自分のところの売り物をネガキャンすることになってしまうので…
      本来はプロフェッショナルとしてきちんと啓蒙すべきなのですが。

      しかしどれだけ文句を言っても、最終的にそのリスクを負わされるのは自分(の眼)です。
      仰る通り、正しい情報をきちんと得ていくことが自衛になります。

      こういった利益相反は眼科に限らずそこここに溢れていて、情報リテラシーが問われますね。
      健康や医療に関する情報は関心が高く拡散されやすいので、デマのネタとしてもとくに狙われやすいです。

      もちろん、私が本当に眼科医なのか・この記事に書かれていることは本当なのかを確認することも大事だと思います。(ツイッターや記事を見れば、ある程度は察しが付くと思いますが笑)

      知識は力ですね。

      返信
    1. Dr. Koala 投稿作成者

      コメントありがとうございます!
      現役眼科医からのこういう視点、なぜか見当たらないので書いてみました!

      返信

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