日本の普通の英語教育を修了しても、ほとんどの人は英語を話せるようにはなりません。
私は日本に居ながらにして英語力の根幹を養うことに成功しましたが、学校教育のおかげというわけでは決してなく、自分自身の試行錯誤や努力の賜物でした。
英語を話せるようになるだけで自分の価値が大幅に上がり、場合によってはマネタイズすることすら可能なのに、多くの人が英語を話せないなんてもったいない話です。
(厳密には、日本人に英語を話せる人が少ないからこそ、英語が話せるだけで価値が上がるわけですが…)
今回まったりバイト中に読んだ本は、英会話学習に特化した本です。
「難しいことはわかりませんが、英語が話せる方法を教えてください!」という、けったいな笑タイトルの本です。
が、内容はなかなか優れていました。
本書は「日本人が、どうすれば英語を話せるようになるか」を徹底的に追求しています。
既存の英語教育とは方向性が大きく異なりますね。
著者はスティーブ・ソレイシィという、ワシントンDC生まれのアメリカ人。
日本で英語教師として働いた後、英会話講師やNHKテレビ・NHKラジオの講師もしていた方です。
もくじ
■難解な英語パズルは必要ない
たとえば
「a」と「the」の使い分け
「可算名詞」と「不可算名詞」
なんかに日本人は頭を抱えるわけですが、ぶっちゃけて言うとaでもtheでも、間違えて使っても文脈から話は伝わります。
可算名詞・不可算名詞も然りですね。
その他にも、関係代名詞なんて使わずとも会話は成り立ちます。
受験英語では必ず出題される項目ですが、関係代名詞は2文を接続して1文にしているだけです。
たとえば
「I know the woman who is playing the violin.」
などとかっこつけて言わなくても
「I know the woman.」(私はその女性を知っています)
「She is playing the violin.」(彼女はバイオリンを弾いています)
と言えば済むだけです。
わざわざ1文にしなくても、2文に分けて言えば伝わるのです。
関係代名詞のような、重箱の隅をつつくようなことばかりを勉強しても、英語が話せるようになるはずがありません。
文法的厳密さよりも、相手にきちんと伝わるかどうかが大切です。
■「釣り竿表現」をマスターする
「釣り竿表現」と言われてもピンとこないかもしれません。
要するに、頻用する定型的表現・単語をストックしておきましょう、ということです。
無駄に英単語の語彙を増やさなくても、手持ちの簡単な単語だけでいくらでも表現することは可能です。
実際、現地の小学生は「小学生レベルの語彙」しか持っていませんが、きちんと英会話できますからね。
釣竿表現の例としては、たとえば「a lot」だったり「big」だったり「see」だったりするわけですが、具体的な表現や活用方法は、本書を参照してください。
いくつものセッションにわたってたくさんの例が挙げられており、どれも今すぐ使える表現ばかりです。
実際私も、いざ外国人と話すとなると、自分の発する構文にいくつかのフレームワークがあることに気が付きます。
会話内容に合わせて個々の単語が入れ替わるだけで、文法的には同じ骨組みの表現です。
その枠組み・骨組みをまずマスターしましょうというのは、非常にコストパフォーマンスに優れた勉強方法なのは間違いないでしょう。
■英語は発音が難しい ・・・?
英語の発音と日本語の発音は大きく異なります。
舌の動かし方も全然違います(かといって、バイリンガルは舌の動きを意図的に変えているわけではありません。自然に、舌が動きます)から、日本人にとって習得は容易ではありません。
もっとも本質的な方法の1つは、私が高校時代にトレーニングした「速読英単語メソッド」です↓
しかしこれには根気が必要です。
今すぐてっとり早く、発音をレベルアップさせたいならいくつかのいい方法が本書には載っています。
そもそもなぜ発音をよくしたいかというと、相手に誤解なくきちんと伝えたいからですよね。
そのための具体例も、本書では日本人の弱点に沿いながらたくさん紹介されています。
■「枕言葉」をつけると、急に英語が通じるようになる
これも、学校では習わない実践的な内容です。
「枕言葉」とはつまり、自分がいいたい本題に入る前につける言葉ですね。
たとえば、何か質問をする前に「Excuse me.」(すみません。)と付ける。
これだけで、かなり自分の英語が通じるようになります。
相手は突然質問されるよりも、「今から質問しますね」と前置きされるほうが心の準備ができます。
自分の立場に置き換えればわかるでしょう。
たとえば電車の中で
「三宮にここからどうやって行けばいいですか?」といきなり訊かれるよりも「すみません、お伺いしたいのですが、三宮にここからどうやって行けばいいですか?」
と訊かれたほうが、ずっと答えやすいでしょう。
人間は突然のものに弱いです。
しかし、前置きしてもらえれば、対応する猶予が生まれます。
この枕言葉、留学を繰り返す中で私は自然と身に付けましたが、それが文章化されてかなりしっくりきましたね。
私が何度も海外留学をして経験的にやっと得たテクニックが、本を読むだけで即座に手に入るわけです。
「Excuse me.」以外にもいろいろな枕言葉があるので、ぜひ本書を読んでみてください。
■前置詞はイメージでマスターする
前置詞に関しては、別に記事を書きました。
ここに書いてあるような内容が、本書でも言われていますね。
■オンライン英会話の活用方法
昨今のテクノロジーの発達により、安い値段で外国人講師と英会話を学ぶことができるようになってきました。
たとえばレアジョブ英会話は、オンライン英会話の最大手で有名ですね。
オンライン英会話は基本的に生徒と講師がマンツーマン、いわば家庭教師のような学習形態です。
画一化された授業ではありませんから、自分の実力に合わせて・ニーズに合わせて、内容を好きにリクエストしてアレンジしていくことができます。
しかし逆に言うと、自分の今の英語力に合わせてアレンジできなければ、効率の悪い学習になってしまうということです。
そこでオンライン英会話を通して英会話力を効率よく上げていくための、さまざまなコツやテクニックが本書には載っています。
会話が続く秘訣、会話を切り返す表現、フリートークで自分の英語表現を磨く方法などがとくに有用と思います。
オンラインの英語スピーキングテストも、活用方法が示されています。
著者曰く「スピーキングテストを受ける人の方が明らかに伸びる」そうです。
まあ、当たり前とも言えますが。
本書で例示されている、英語教材で有名なアルク社が行うTSSTというスピーキングテストは、24時間手軽に受験可能で使い勝手が非常に良いです。
ちなみにスピーキングテストのほうが、TOEICなどのペーパーテストと比べて受験料が高額です。
それは、受験者が話した英語をきちんと採点するのに人件費がかかるからですね。
マークシートを機械に読み取らせるより、コストがかかるのは仕方ありません。
しかしその学習効果の高さを考えれば、結局は早く英語が上達して最終的なコスパで勝ります。
■SPM (Sentences Per Minutes)
SPM (Sentences Per Minutes)、つまり1分あたりの文章量という概念があります。
実はSPMが上がると、つまり発話スピードが上がると、文法ミスが減り、話の内容も論理的になるのだそうです。
これは正直、目からうろこでした。
ゆっくり丁寧に話した方が、伝わるような気がしますからね。
しかし直感とは逆に、発話量が増えて情報量が増えることにより、より容易に文脈をつくれる、つまり相手により言いたいことを伝えることができるそうです。
著者は文章を連続させて説明することを強く推奨しています。
つまり下手に「私は太郎という名の、散歩好きな犬を飼っています」と、文法に気を付けながらモタモタ言うよりも
「私は犬を飼っている。」
「犬の名前は太郎だ。」
「太郎は散歩が好きだ。」
・・・
と文章を連続させた方が、英会話においてははるかに話が通じます。
中国人の英語は一般に、発音が下手で文法もめちゃくちゃです。
でもマシンガンのように止めどなく言うから、なんだか意味は通じてしまう。
この感覚、海外旅行先や留学の経験から腑に落ちる方もいるのではないでしょうか。
(私はかなりしっくりきました)
■英会話を上達させるための、もろもろのトピック・テクニック
上記を例に挙げましたが、有用な情報は他にも本書に詰まっています。
たとえば・・・
ジェスチャーの効果的な活用方法
単語の語順をどうするべきか
英語学習の優先順位のつけ方
「比較級は2つに分ける」
頭を使わずに付加疑問文を使う方法
Amazonプライムで英語を習得する
あたりはとくに、非常にタメになるはずです。
■英会話上達の最短経路:「難しいことはわかりませんが、英語が話せる方法を教えてください!」まとめ
結局のところ、本書が一貫して目指すのは
「手持ちの英語力でいかに外国人とコミュニケーションできるようにするか」
「どうやって手持ちの英語力を効率よく、さらに伸ばすことができるか」
です。
「手札の使い方」と「手札の増やし方」ということですね。
日本人の陥りがちなピットフォールを紹介しつつ、実践的な英会話能力の向上を目指す、最短経路を示す良書でした。
私の「速読英単語メソッド」は、本質的な実力が付きますが、その分時間と労力を要します。
高校3年間このメソッドを頑張ったからこそ私はマネタイズできるほどの英語力をつけることができたわけですが、そんなに時間をかけてばかりはいられない人も多いはずです。
そういう意味で、忙しい現代の社会人なんかには「難しいことは分かりませんが、英語が話せる方法を教えてください!」のほうが手っ取り早くて向いているのかもしれませんね。
私が「最短経路」と記事のタイトルにつけたのも、そういうところからきています。
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参考:「難しいことは分かりませんが」シリーズについて
実は以前に、マネー関係の本「図解・最新 難しいことはわかりませんが、お金の増やし方を教えてください!」の書評を記事にしています。
どうもこのシリーズは、名前通り「上手に噛み砕いて、読者に分かりやすく内容をまとめる」ことに長けているようです。
今後も注目ですね。