以前の教科書紹介が好評だったので、科・分野別のおすすめ本・教科書・参考書も紹介します。
↓過去の記事です。研修医がまず読むべきなのはこちらでしょう。
初期研修医向け おすすめの教科書を3冊厳選!
今はもう眼科のことばかりを考えて日々を過ごしていますが、私は県内でもマッチング上位の人気病院で初期研修を受けたので、研修医時代に受けた全科的教育の水準は高いと思います。
どの科もアクティビティが高く、同期や先輩後輩との屋根瓦式の教育も根付いていました。
以下は私が初期研修医時代に愛用した、自信を持っておすすめできるラインナップです。
丸暗記に頼らない、原理原則のきちっと書いてある本(かつ過度にアカデミックでなく、忙しい研修中でも十分に活用できるレベルのもの)を基本的にチョイスしています。
効率よく原理をマスターできれば、暗記を最小限に留めることができます。それによって節約できた脳内メモリは、別のことに使うことができます。
「丸覚え」したものは「丸忘れ」しますが、理由を理解したものはなかなか忘れません。
記憶がきっちり定着すれば、丸暗記⇒丸忘れ⇒丸暗記⇒・・・の悪循環に時間を浪費することはありません。
研修医は目まぐるしく科をまたいで研修していきます。
ですからある分野を深堀しすぎるのも考えもので、広く浅く万遍なく知識を付けていくほうが要領が良いです。
興味のある分野はいずれ専門に進めば好きなだけ学べますから、研修医の今しか学べない知識や経験に集中すべきだと思います。
要するにここで紹介する本たちはみな、コスパ重視の私好みの、(時間的)費用対効果に優れるものばかりです。
まずは幅広く・大まかに・効率よく知識を肉付けすることができれば、後からいくらでも深めることができます。
土台が広くしっかりしていればしているほど、安心して高さを積み上げていくことが可能になります。
もくじ
■整形外科
手・足・腰診療スキルアップ (CBRレジデント・スキルアップシリーズ (4))
「手・足・腰診療スキルアップ」
著者は西伊豆病院の仲田和正です。整形外科のスペシャリストでありながら、内科を含む全科的な知識も非常に深く分かりやすい講義は有名です。
私の研修先は、土地柄か救急で整形外科的疾患がよくくる病院でした。
足首の捻挫や大腿骨頚部骨折など、コモンな外傷はたくさん経験できました。
専門分野の本はその領域の専門家が書いているため、必ずしも初学者にとって学びやすいものではないのですが、この本は別格です。
骨や関節にはそれぞれ診察時にチェックすべきポイントがあり、逆に言うとそのポイントを押さえておけば自然と適切な診察・評価が可能です。
症候学や初期対応、注意すべき点などがわかりやすい図とともにまとまっています。
救急当直の時に整形の先生によくカルテを褒められましたが、私はこの本のポイントをていねいに押さえて診察していただけです。
整形外科志望なら術式はどうしようとかもっといろいろ考えることがあるんでしょうが、そうでないならきちんと評価ができ、正しい情報・評価を添えて専門医にバトンタッチできればそれで満点なのです。
そしてそれはこの本で必要十分でした。
■精神科
「一般臨床医のための メンタルな患者の診かた・手堅い初期治療」
タイトルの通り、精神科に進まない医師にとくにおすすめです。(精神科志望の方も、初めの1冊としては優れています)
一般的な入院中・診療中に起こる、精神科的プロブレムの解決に重点が置かれています。
コンサルトすべきか・すべきでないか、するなら何に注意すべきかがきちんと書かれています。
重症な統合失調症なんて精神科医しか対応しません。そんなことより私たち他科医師に必要なのはたとえば「不眠症へのワークアップ」や「術後せん妄へのワークアップ」です。精神科へのコンサルに迷う、他科医師の葛藤が十分にケアされています。
救急外来や全身疾患との兼ね合いなどもしっかり載っています。
さらに優れているのは、薬の使い分け・種類がきっちり記載されている点です。
この病気には●●系の薬、などと概念的にわかっていても臨床の現場ではどうにもなりません。初期量は?維持量は?効かなかったら何に変える?具体的な知識が必要なのです。
私は精神科ローテーション時代に常にこの本を携帯していましたが、一見気まぐれに見える精神科医の投薬調整や処方薬の選択に根拠があることを学び取ることができました。
精神科医はその道のプロですからとっくに頭に入っている知識ですが、研修医はビギナーです。精神科医の頭の中・治療の考え方やプロセスが文章化されている名著です。
他科志望ならば、精神科ローテはこの1冊だけで十分です。
■ICU・CCU 集中治療
「ICU/CCUの薬の考え方、使い方」
ICUに受持ち患者が入ったら・・・おそらく最初は何が何だか理解できないと思います。
一般病棟管理に慣れた後でも、ICUでの管理は全く異なります。
カテコラミンや鎮静、またバイタルや病状の変化スピードも全然違います。
えてして経験則で片づけてしまいがちですが、すべての選択に理由があります。
カテコラミンのどれを使うのか、どの程度使うのか いつどうなったら抜管できるのか
などなど、具体的なシチュエーションにおける、具体的な根拠・具体的な用量・用法がきちんと書いてあります。
また言葉づかいが明瞭なため、ページ数の割にはさくっと読め、頭にもよく入ります。
■放射線科・画像診断
画像診断に絶対強くなるワンポイントレッスン 〜病態を見抜き、サインに気づく読影のコツ
「画像診断に絶対強くなるワンポイントレッスン」
雑誌「レジデントノート」の特集コーナーが評判だったために1冊の本になったものです。
頭部・胸部・腹部などと部分ごとに解剖理解のコツや注意ポイントがまとまっています。
「ワンポイントレッスン」という名前の通り、重苦しい教科書とは違った実践的な解釈・パールがたくさんあります。
脳梗塞、肺炎、虫垂炎…放射線診断医がいかに頭の中で画像を組み立てているか、何を考えながら診断しているかという、私たちにも再現可能な思考プロセスが目白押しです。
救急外来なんかではまず自分で読影してみるはずです。画像診断の力がつけば、自分のアセスメントに自信が持てます。
また身体所見や病歴から推察した病態の答え合わせにもなり、ある程度知識がついてくると大変楽しい分野でもあります。救急外来にやって来る救急車の到着が待ち遠しくなります。
「臨床推論」の教科書やセミナーが流行っているのは、そういう知的好奇心が得やすいからでもあります。
■糖尿病内科
「糖尿病治療ガイド」
日本糖尿病学会の書籍です。
思考プロセスが特別優れているわけではないのですが、糖尿病内科で得ておくべき知識はすべて詰まっています。
1000円しない価格で、分厚いわけでもなく、しかし学習すべき事柄はすべて載っているので、とりあえずこの1冊を活用するだけで研修は合格ラインに達します。
糖尿病を極めたい方は、専門書へ進みましょう。
■小児科
「小児の薬の選び方・使い方」
小児科領域では、これが最強です。
よくある症状それぞれに対して、症候学的アプローチ・鑑別・治療まですべて載っています。治療は薬品名や用量まで具体的に載っているので、本当にこの1冊だけで小児科のプライマリ診療が完結します。
輸液や経口補液、よく使う抗菌薬なども載っており、個人的には一家に一冊レベルの内容だと思っています。
将来子供ができたときに十二分に活用すべく、私の家では本棚の比較的好立地の場所を陣取っています。(子供よりも前に、子供を産んでくれる人探しを先に考えなければいけませんがw笑)
■循環器
「3秒で心電図を読む本」
有名な本なので、ご存知の人も多いでしょう。
心電図の本はたいてい、厳密な議論や分類に固執しすぎて、分かりやすさが置き去りになったものが多いです。
しかしこの本は類書とは一線を画します。
私自身は学生時代に既に一度読んでいましたが、心電図を日常的に見るようになった研修医時代に改めて目を通してみました。
学生時代は実体験に乏しい分そこまで良書とは思っていなかったのですが、臨床を経験しているとこの本のよさに気付きます。
臨床の現場では重箱の隅をつつくような細かい定義は必要ありません。
解釈に時間がかからないこと (臨床現場は忙しいです。心電図をのんびり読む時間はありません。)
やばいのかやばくないのかが判断できること
がとくに重要で、そこに力点が置かれているところがこの本のユニークでかつ優れている点です。
眼科でも、手術の際にはルーチンに心電図をとります。
私のもとに術前の心電図データが回ってきますから、それをナナメ読みして5秒ほど(3秒は私には難しいのでちょっと長め笑)で循環器コンサルすべきかどうかを判断することができています。
やばいのかやばくないのか、手術してからでもいいのか手術は中止すべきなのか、詳しい細かい病名がほしいのではなくどうマネジメントしたらいいかの方向性を、臨床の現場は求めているのです。
■眼科
「内科医のための やさしくわかる眼の診かた」
眼科志望でない!研修医向けならこの本です。
たとえば糖尿病内科志望の人や、とりあえずマイナー科が気になるので眼科を回ってみる人など。
とくに糖尿病内科は眼科とは不可分です。眼科の基本の「き」だけでも知っていると、糖尿病管理に深みが出ます、糖尿病は全身疾患ですから。他の糖尿病内科医が眼のことを知らない・興味がない分、少ない努力で大幅にリードすることができます。
正直言って、眼科の診察は眼科医にしかできません。
数時間顕微鏡の使い方を習ってみても、所見を正しくつかみ適切に評価・治療することはできません。
実体験や後輩の指導をしていて感じますが、よっぽど要領のいい優秀な人でも、1年間眼科を回り続けてもそのレベルには達しません。
他科の医師が身に付けるべきは、自分の科と眼科がどのように関わっているかを知ること・適切なタイミングで眼科医に相談できるようになることです。
最近ジェネラリストやプライマリケア医向けの眼科本がいくつか出ていますが、その中でもこの本が最も内容的に優れています。
それはおそらく、筆者に12年間の内科勤務歴があるからでしょう。しかも亀田総合病院など、いわゆる「きちんとした」内科病院で研鑽されています。
本当の意味で眼科を内科医の目線で解説しているのはこの本だけです。
内科医が分かっておくべきこと、知らないでいいことの線引きがなされていて、眼科医にとって当たり前でも他科医にとってはそうでないこと、全身疾患との兼ね合いなどが記載されています。
個人的には、非眼科医師の全員に読んでおいてもらいたいです。適切なタイミングでの評価・眼科コンサルにつながります。
また内科の処方した薬で、緑内障や視神経症を引き起こしたりすることは決して稀ではありません。
近所のかかりつけ内科医が13歳の子供に漫然と塗り薬を出し、見にくくなって眼科に来た時にはすでに緑内障で両眼失明寸前、という経験もあります。(←ステロイド緑内障です)
前途洋々の若者の両眼すら奪う権力が、恐ろしいことに医師免許には備わっています。
無知では済まされません。(これは他科の知識に乏しい私にとっての自戒でもあります)
ちなみに眼科志望のあなたにはこちら↓
眼科研修医向け おすすめ教科書決定版!
眼科を選ぶことを検討している先生向けに、こんなnoteも書いてみました。
眼科を選択期間で何か月回ろうか迷っている方にイチオシです↓
>>>眼科志望の初期研修医/医学生のための、自由選択期間の使い道ガイド!
■エコー・超音波
「エコーの撮り方 完全マスター」シリーズ
エコーは低い侵襲の割に得られる情報が多く、最近はハンズオンセミナーもよく開催されています。プライマリケアでは必須のツールとなってきており、エコーを研修で学べるかどうかはよい研修病院かの一つの判断基準にすらなっています。
この本はとにかく絵や画像が素晴らしく、描出すべき断面もまとまっています。色使いがいいため解剖が非常にクリアに分かります。
また正常編と異常編に分かれているところが本質的です。
エコーに限らず診断学はすべて、正常の理解が基本になります。正常を認識していないと、異常を異常だと検出することはできません。
この2分冊で主要な見方・正常像・異常像をカバーすることができます。
エコーへのアクセスがよい病院であれば、どんどん試してみましょう。ほとんどの臓器で役に立ちます。
(眼科でも超音波検査はありますし、整形外科や肺エコーなんかも話題です)
私の研修病院でも重点的にトレーニングをすることができました。救急外来で採血待ちの合間にささっと当てたりもできます。
あとでCTも撮っていれば、答え合わせもできますね。
心エコーによる心機能の評価は鉄板ですが、虫垂炎を診断したりもしていました。アニサキスも実はエコーで診断できます。
帯状疱疹で受け持っていた患者が入院中に発症した虚血性腸炎をエコーで診断できたときは、真剣に消化器内科から勧誘を受けました笑
エコーは慣れるまでは難しいですが、できるようになると評価や鑑別に幅が出ます。
この本に適宜立ち返りながら、問診やルーチンの身体診察と同列ぐらいの勢いでエコーにトライすれば、あっという間に上達します。
■呼吸器
「レジデントのためのやさしイイ呼吸器教室」
著者の長尾大志先生は滋賀の著名な呼吸器内科医ですが、その分かりやすい語り口で本や講演も大人気です。
ご自身でブログもされています。
呼吸器内科を学ぶ上でのポイントや画像読影など、研修医が身に付けるべき知識が分かりやすくまとまっています。
呼吸器内科を回る人は、この本を読み込めばばっちりです。とにかく分かりやすいです。
■診察・手技・処置
「診察と手技がみえる」
これも鉄板ですね。学生時代にOSCE対策で買った人もいるでしょう。
写真が多く、コツも詳しく書いてあります。研修中に手技のチャンスが回ってきたら、手技前に予習・手技後に復習するようにすれば万全です。
器用・不器用というよりは、数をこなしたか・理論が分かっているかが大事です。
自転車に乗るのと同じで誰でも一定レベルには達することができますから、この本を使って効率よく手技も吸収しましょう。
■医学英語
英語、とくに医学英語の力があるかどうかは、今後の医師としてのポテンシャル・可能性に大きく影響します。
一朝一夕に身につくものではありませんから、研修医の時期から少しずつでも、手を付けておくべきでしょう。
医師の事情に特化したおすすめの教材や勉強方法を、別記事にまとめてあります。
【医学英語】医師におすすめの英語学習教材・勉強法 まとめ
■初期研修医に超おすすめの医学書たち まとめ
回る科ごとに、上記で紹介した本を上手に活用するか否かで、同じ期間のローテーションでも吸収量に天と地の差が生まれます。
心も体もしんどいのが研修医です。効率よく時間を使い、忙しい中でも充実した研修生活を送りましょう。
ちなみに、Amazonポイントを確保しておけば、教科書代とは無縁の生活を送ることができます。
【医師限定の隠れ収入①】Amazonギフト券を年20万円、時間をかけずに稼ぐ方法
おまけ1 専門科選びのアドバイス
初期研修も2年目に入れば、そろそろ自分が何科に進むのかを決めなければいけません。
いろいろな科で研修していく中で、将来やりたいことも少しずつ明確になってきたはずです。
学生時代の気持ちが、実際の臨床経験を経て大きく変わることも稀ではありません。
志望科の選択は自分の人生数十年を大きく左右する重大な決断です。
上司や先輩に相談するのももちろんよいですが、違った切り口を持っておくことも大事です。
現役医師がおすすめする/しない、専門科の選択
おまけ2 使い終えた教科書・医学書の活用法
初期研修医になると、頭の中は臨床のことでいっぱいになります。
基礎研究志望の人を除けば、ほとんどの人にとって基礎医学の教科書をもう一度腰を据えて読む機会は今後二度とないでしょう。
そもそも基礎医学で買ったたくさんの教科書のうち、本当に手元に残しておくべき・臨床医でさえも持っておくべきものは一握りのはずです。
基礎医学を筆頭に、本棚の肥やしになっている二度と読まない教科書は早めに処分しておいた方がいろいろな意味でオトクです。
処分するといっても、廃棄するのではありません。
上手くやれば、廃棄するはずだった医学書はすべてお金に変えることができます。
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使い終えた医学書を高く売るコツ:廃棄本すらもお金に変えよう
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