病院の時間外受診は、いろいろヤバイ:勤務医の切なる願いを聞いてほしい


人間、いったいいつ病気になるか分からないし、いつけがをするかも分かりません。
ですから、救急受診はもちろんある程度仕方ありません。

しかし、緊急性の乏しい病状で病院を時間外にコンビニ受診するのは、患者自身も医療者も含め全員が不幸になります。

※時間外とは病院の診療時間外、つまり深夜・早朝だったり土日祝日だったりを指します。

■時間外・夜間・休日は割増料金

医療機関だって、タクシーと同じで割増料金があります。
時間外・夜間・休日はとうぜん病院側の人件費も上がってしまいます。

その割高のコストはとうぜん患者側(+国)が負担することになります。

たとえば協会けんぽのHPでうまくまとまっています。

(https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g5/cat540/20130224001)

受診した病院の診療体制によって多少変動がありますが、おおよその目安として参考になります。

時間内に受診していればかからないコストを、これだけ患者が負担することになります。

■時間外は検査体制が貧弱


時間外は臨床検査技師や放射線技師などの人員が手薄になります。
大きい病院なら検査当直が居ますが、そうでなければ検査技師が居ないこともあります。

その場合はちょっとした血液検査も、結果が出なくなります
仮に検査技師が居ても、なんでも受け入れるとパンクしてしまうので最低限の検査項目しか測定できません
CTやMRIだったりの大掛かりな精密検査も、大きく制限されてしまいます

緊急性の高い状態なら最低限の検査項目でもある程度役に立ちますが、たとえば2週間前からの症状を精査しようと思えば「最低限の検査」では不足です。

時間外の病院は、パフォーマンスが大きく落ちます

■時間外は看護人員が手薄


時間外は看護師の人員も、時間内と比べて少なくなります
繁忙期と閑散期で人員数を変えるのは当たり前ですね。

郊外のショッピングモールのアパレル店で、平日午前と休日午後のスタッフ数が同じだったらドン引きですw
病院も同じです。

手薄になると、当然看護のクオリティも下がります
「余裕があればできること」はすべて削がれます。
「最低限やらなければいけないこと」だけでも精一杯になるので、プラスアルファの看護は時間外にはできません。

時間外の病院は、パフォーマンスが大きく落ちます

■知ってた?時間外勤務の救急医師って・・・


診療のクオリティに一番大きな影響を与えるのが医師
です。
時間外に勤務している医師ってどんなかんじだかご存知ですか・・・??

時間外に働かされる医師は下っ端

しんどい仕事・割に合わない仕事は当然若手・下っ端に押し付けられます
お偉い教授や部長がそんなこと、するわけがありません。

つまり時間外に病院を受診しても、経験手薄な医師が診療に当たる可能性が高いです。
また初期研修の指定病院の場合、たいてい時間外救急は初期研修医が対応します。
大病院ほど教育的側面を持つため、大病院ほど対応は研修医がすることになります。

一般の方は病院の規模が大きいほどありがたがる傾向がありますが、上述のことを頭に入れておいた方がいいです。

病院によっては、4月1日の入職当日から救急外来をさせるところもありますw
昨日まで学生だった人達が、あなたの大事な身体を担当します。

時間外は医師も手薄 専門家も揃わない

検査技師や看護師が手薄なのと同じように、医師も当然時間外は手薄になります。

たとえば内科医師が当直していたとしても、1人だけです。
内科には循環器内科も神経内科も免疫内科も腎臓内科も内分泌内科もありますが、そのうちのどれか1つです。

内科医師が居ない場合もあります。
その病院にその時間にいる医師が、整形外科だけだったりすることもあります。

餅は餅屋という言葉があるように、医療の世界にも専門科があり細分化されています。

フレンチの料理人に和食をつくってもらってもいまいちなように、整形外科医に腹痛を診てもらってもいまいちなんです。

※私の先輩の一人は、眼科医で全身を全く診れないにもかかわらずふつうに一人で当直させられてるらしいですwww
発熱とか骨折とか吐き気とか胸痛とか、いろいろ来るらしいですがw
自分で言うのもあれですが、眼科医に全身疾患を任せるなんて、ホラー映画か何かでしょうかw

医師の勤務体制は労働基準法違反

多くの病院で、医師の勤務体制は労働基準法に違反したまま放置されています。
看護師はシフト制で2交代・3交代だったりしますが、医師にそういう概念はありません。

たとえば火曜日に当直(という名の夜勤)がある場合は

火曜日 朝~夕 通常勤務
火曜日 夕~朝 時間外勤務
水曜日 朝~夕 通常勤務

となります。
ざっくり36時間連続勤務です。

この状態の医師に、正確・確実な治療判断が下せると思いますか?

一度真似をしてみるとよいかもしれません。
深夜に病院を受診することが(患者にとっても)いかに非合理的か、理解する助けになると思います。

時間外診療は、次の時間内診療までの「つなぎ」

基本的に時間外の救急的治療の場では、翌朝までなんとか「持たせる」ことに重きを置きます。

このままほっておくと死んでしまう・状態が悪化してしまう
という場合に積極的に治療介入し

一晩ほっておいても大勢に問題なし
という場合には、対症療法でお茶を濁します。

昨今は治療へのクレームも多いですから、それを抑えるために何気ない対症療法薬を処方せざるを得ないこともよくあります
医師の「薬は不要なので様子を見てください」などといった医学的に正しい説明に納得ができない人は、さらに別のリスクを背負うことになります。

「くすりはリスク」その薬、飲んでも大丈夫?

■病院の時間外受診は、いろいろヤバイ

まとめると・・・

・わざわざ普段より割高な料金を支払って
検査体制・看護体制が貧弱な時を狙って
経験手薄(しばしば研修医)+専門外疲労困憊の医師に
・次の平日までなんとかなる最低限・その場しのぎの医療をしてもらう

というのが、病院の時間外受診です。
時間外の病院は、パフォーマンスが大きく落ちるからです。

とりわけ年度の早い時期だと、医師も看護師も新卒で採用したてだったりするので、とくにパフォーマンスは落ちがちです。

「日中は仕事で病院を受診できないので」などと夜間に来る人、ちょくちょく居ますが・・・
この現状を知れば

不要不急の時間外受診は止めよう
時間外で仕方ないからパフォーマンス低下は甘受しよう

という心持ちになるはずです。

もちろんふつうの人は医学に関して素人ですから、緊急性を判断することはできません。
時間外であっても構わない・緊急性があるかを判断してほしい という場合は、受診するのも一つの手です。そのために病院は時間外でも救急外来を開けています。

私が強調したいのは「急を要さない病状」なのに「時間外受診」するのは、全員にとって不幸である、ということです。

「緊急じゃなければ、昼間に来てくれ!!!」・・・これは全医療者の、切なる願いだと思います。。

小手先の節約より、広い意味でよっぽど役に立つライフハックです...。

 

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