■投資といえば、不動産投資?
「投資」と聞くと何を思い浮かべますか?
ある人は株式
ある人は外貨(FX)
ある人は仮想通貨
ある人は不動産 が思い浮かぶでしょう。
投資の形はさまざまです。
それぞれに個性があり、メリットもデメリットもあります。
巷には「医師は不動産投資に向いている」と謳う本が複数出版されています。
「医師 不動産投資」と検索するだけで、こんなにたくさんの書籍がヒットします。
そこで今回は、不動産投資に関しての私見を述べてみたいと思います。
■不動産投資の本
たとえばこんな本があります。
これらの本を一度読んでみるのもよいでしょう。
不動産投資の概要がつかめます。
ただし、著者が医師向け資産運用会社の人間だったりするので、鵜呑みは危険と思います。
■不動産投資のメリット
一般に不動産投資は利率がいいです。
株式で配当利回り5%の銘柄は少ないですが、不動産なら利回り10%も実現可能です。
また一度入居者が現れればなかなか転出しないため、安定的に家賃収入が得られるというメリットがあります。
マンション1棟買いであれば、全室が空き家になることはふつうないので、そういう意味でも収入の安定感はあります。
■医師は不動産投資に向いている?
不動産投資は、初めに巨額の初期投資(→融資)を必要とします。
その点医師は社会的信用度が高く、ローンの審査は通りやすいです。
給与所得が一般職種に勝ることも分かっているので、ローン額の枠も大きくできます。
条件のいい融資を得られるわけです。
そうするとレバレッジをかけることができ、資産運用に有利になります。
例えば同じ利回り5%でも
1000万円の物件なら年間収入は50万円
1億円の物件なら年間収入は500万円 になるのです。
種銭が多ければ多いほど、リターンの絶対額は増えます。(利回りの%は同じです)
■不動産投資はおいしいところだらけ?
では不動産投資は株式投資に勝るのでしょうか?
実は不動産投資は利回りが高い分、リスクも織り込まれています。
日本は人口減少国
不動産投資にとって、顧客とは物件に住んでくれる人です。
その人口が、日本では毎年どんどん減っていっています。
日本中の人を吸い上げている東京ですら、2025年をピークに減少に転じるといわれています。
建物・不動産は同じスピードでは減りませんから、基本的には供給過多の構図です。
不動産投資は、減りゆく顧客を奪い合う消耗戦です。
不動産は時間とともに価値が下がる
新築のマンションは家賃を高くしても、契約してもらえます。
しかし年数がたてばたつほど、不動産の価値は落ちます。
同じ家賃では人が集まらなくなり、家賃の値下げを余儀なくされます。
最初の利回りが高いからといって、10年20年先もその利回りを維持するのは困難です。
あるいは築10年たち、目の前に大型の新築マンションがたったらどうなるでしょうか。
かなりの需要が、新しいマンションに流れると予想できますね。
それに対抗するには、さらに家賃を下げなければいけません。
こうして、対外的な競争にもさらされて値下げの消耗戦を余儀なくされます。
株式は対照的です。
経済成長とともに株価は上昇します。
時がたてばたつほど、経済が成長していればその価値は増すのです。
不動産は時を経て価値が上がることは通常ありません。
ただ、株式ももちろん不況時は不動産と同様に価値が下がります。
リーマンショックで資産評価額が激減した方もいるでしょう。
株式だけがノーリスクなわけではありません。
突然のリスクに対応できる?日本は災害大国
不動産は文字通り「動けない財産」です。
地震が起きても火事が起きても、洪水が起きても建物は逃げられません。
自然災害の影響をもろに受けます。
建物がダメージを受けた場合は、修繕費用がかかります。
修繕するだけで済めばいいですが、場合によっては住んでくれる人がいなくなります。
究極の例は、福島原発でしょう。
福島原発のそばのマンションのオーナーは、周辺区域立ち入り禁止に伴い事業継続が困難になりました。
そのための保険なんかもありますが、それで損失をカバーしきれるでしょうか。
一番最初に巨額の借金を背負っているというのに。
そもそも保険料も余分にかかりますね。
人災の場合もあります。
所有棟内で自殺や刑事事件などが起ころうものなら、不動産の価値は下がってしまいます。
家賃不払いもありえます。
当初の目論見通りの収益を得るためには、さまざまなリスクを乗り越える必要があります。
不動産は不労所得ではない
不動産は不労所得ではありません。
トラブルにはオーナーが対応する必要があります。
忙しい医師業のかたわらで、それをまっとうするのはなかなか大変です。
いわば「オンコール二重の刑」です。
トラブルはそう頻繁には起きませんが、呼ばれる可能性がゼロなのとそうでないのでは、大きな差があります。
もちろん不動産管理会社に実務を丸投げして、不労所得化することもできます。
ただしその場合は、良質な会社をきちんと選ばないとごっそり中間マージンを抜かれることになります。
せっかくの高い利率が台無しですね。
この中間マージンがおいしいからこそ、高所得者向けの不動産投資関連会社はたくさん存在するし、忙しい外来中にもわざわざ電話をかけてくるのです。
不動産投資を完全に独力でやるのは無理ですから業者のサポートは不可欠ですが、良心的な会社を見定める力量が必要になってきます。
逆に株式投資は、バイアンドホールド戦略を取れば、手間がかかるのは購入する時だけです。
あとは自動的に、配当が振り込まれていきます。
ただし、個別株投資の場合はそれなりに手間がかかってきます。
銘柄選定や売買のタイミングが最重要だからです。
四季報などから企業の財務を把握し、買うべき銘柄に目を光らせなければいけません。
株を買った後も経営状況を定期的にチェックしておく必要があるので、不動産と同じく「資産のメンテナンス」が多少必要になります。
それを怠ると、リターンを大幅に毀損する「リスク」が上がってしまうことになります。
一方私の愛用するETFの場合は破綻リスクがないので、ほったらかし投資に最適です。
ほどほどのリターンしか得られないのが欠点ですが、管理の手間はほとんど不要です。
株価を追いかけ続けるデイトレードとは、根本的に別物です。
不動産投資は初期投資額が大きい
不動産投資は初期投資が最大の出費になります。
つまり、もっとも不動産投資初心者の時期に、もっとも大きなお金を動かさなければいけないのです。
ここに不動産投資最大のリスクがあると思います。
何軒も不動産を所有し経験を積んでいるならともかく、右も左もわからない状態でいきなり多額のローンを背負うのに、私は大きな抵抗があります。
いくら机上で理論を学んでも、実地の経験には勝てないからです。
採血の仕方を何回本で読んでも、なかなかできるようにはなりません。
やってみないと、うまくならないのです。
そして、不動産は海千山千の業界です。
経験不足の初心者ほどカモはいません。
最初に不良物件を掴んでしまった場合、損失額は半端ないです。
そして巨額のローンを、残りの人生で返していく羽目になります。
ハズレ物件を引かされない、変な業者と契約しない、そのためには知識が必要だし、多くの物件を実際に見学して勉強していかないといけません。
知識や経験があれば不動産投資のリスクを下げることは可能ですが、無知のまま挑戦しても大やけどするだけです。
そもそも投資の基本は「分散によるリスク軽減」です。
にもかかわらず、不動産物件を買ってしまうとポートフォリオ上での不動産比率が高くなりすぎてしまいます。
資産5億円の人が5000万円(=総資産の10%)の物件を買ってもさほどリスクは上がりませんが、資産1000万円の人がレバレッジをかけて5000万円の物件を買った場合、リソースが不動産に集中しすぎてしまいます。
逆に株式投資は、少額から分散投資が可能だし、レバレッジをかけないかぎりは借金にはなりません。
手元にある現金を使うだけなので、大負けしても最悪でも投資した現金がゼロになるだけです。
借金にならないという点が重要です。
やり直しがきくのです。
また少しずつ投資していくわけなので、自然と経験値も貯まります。
経験を積みながら、運用額が大きくなっていきます。
■不動産投資vs株式投資 まとめ
不動産投資のメリット・デメリット
不動産投資は元来利回りが高く、優良な物件を効率よく運用できれば大きな収入を得ることができます。
実際、世の中には医師免許という高い属性を活かしてレバレッジをかけ、何棟もの物件を所有し莫大な富を築いている医師もいます。
ここまでいくと「資本家」「事業家」の領域です。
彼らの稼ぐ力は、ふつうの医者の比ではありません。
世界の大金持ちもみな、多かれ少なかれ不動産を保有しています。
しかし一方でたくさんのリスクを背負っているのも事実です。
メンテナンスには時間も手間もかかり、本業である医師の仕事にも影響が出る可能性があります。
株式投資のメリット・デメリット
株式投資のメリットは上記に加え、こちらの記事で詳しく述べました。
もちろん、株式にだってリスクはあります。
100年に1度の大不況といわれるリーマンショックでは、資産価値が短期間で50%以上減少した銘柄もたくさんありました。
(その後多くは回復したわけですが)
個別株投資の場合は、銘柄選びが非常に重要です。
仕事好きの凡人医師には、不動産よりコツコツ株式投資が向いている
投資利益は「リスクプレミアム」、つまりとったリスクに応じたリターンが見込めます。
投資行動には本質的にリスクがついて回り、そのリスクが割安感となり利益を生み出します。
今すぐアーリーリタイアして、悠々自適の生活を送りたいなら不動産投資は向いています。
「適切」な物件を選び、「適切」な管理会社を選び、 十分にレバレッジをかけ、 「適切」に不動産を運営することができれば、今の給与所得をはるかに上回るキャッシュフローを生み出すことは可能です。
しかし私は別に、アーリーリタイアしたいわけではないんです。
石油王のような豪華な暮らしがしたいわけでもないんです。
眼科医の仕事はやりがいがあって楽しいし、これからも続けていきたい。
ただ、子供のころのようなお金に困った暮らしがしたくないだけです。
そう考えると、本業が充実していて忙しい凡人の私には、やっぱり株式が適しているなあ、と改めて感じます。
ETFを活用したコツコツ投資は、ほどほどのリターンが得られ、再現性が高く、初心者でも難しくありません。
(相場状況に左右されずに淡々と買い続けることだけが、精神的に難しい)
そうやって資産運用を継続しているうちに勝手に少しずつ資産が増えて、配当金も定期的に振り込まれます。
結局、リスクにリターンはつきものなのです。
高いリターンが欲しければ、高いリスクを許容しなければいけません。
世の中おいしい話はありません。
私のライフスタイルの場合は、ETFへの株式投資が一番合っているということです。
借金もしないし、無理な生活もしない。
ストレスの少ない消費行動をしながら、保有資産が増えていく。
無リスク資産である現金をきっちり確保していれば、暴落相場でもパニックにはなりません。
ETFを用いた株式投資は、相対的に低いリスク・少ない手間で済み、かつ私にとっては必要十分な資産形成の手段なのです。