医学生が絶対に買うべき1冊 医師として働いているからこそ分かる良書

先日医学生である部活の後輩に、教科書について質問を受けました。

自分の学生生活を振り返ると、改めて大事なポイントが見えてきました。
学生時代には気付かず医師として働いているからこそ分かったことがあります。

医学生は、多くの医学書を購入しますが…

医学生はとにかくたくさんの医学書を買います(買わされます)
6年間医学部で教育を受け、医師として働いてみて思うのは、役に立った本もあればあまり役に立たなかった本もあるということです。

自宅の本棚にずらりと鎮座する数多の教科書の中で、一番役に立ったのはどれでしょうか。

臨床の教科書はやはり各科で全然内容が違うので、それぞれに1冊は必要でしょう。
しかし医学科1~3年の間に学ぶ基礎医学では、とっておきの1冊があります。

私は学生時代かなり勤勉 (自分で言うのも変ですが 笑) で、いろいろな教科書を使って勉強していました。
貧乏学生でしたから無駄な本を買うわけにもいかないので、立ち読みしたり友人に借りたりして教材の研究にも余念がありませんでした
そして私が買った・目にした基礎医学の教科書の中で、「人体の正常構造と機能」はダントツの名著でした。

ミクロな視点からマクロな視点まで

基礎医学の世界は細かく分断されています。
解剖学、生理学、細胞生物学、、、 しかし本来人体というものはそんなふうには分断されていません。
学問追求のため、人間の都合で勝手に分野を分けていったにすぎません

たとえば私たちの筋肉の動きをマクロに理解しようとすると、それは「解剖学」の範疇になります。上腕二頭筋というものを知ることで、腕の屈曲を理解します。
しかしその筋肉は神経細胞や筋細胞、さらには血管をも含んでいます。これらを顕微鏡を通して見た世界が「組織学」です。
それをさらにミクロな視点で考えていくと、神経伝達物質のやり取り、アクチンやミオシンの挙動、血管を介した物質のインタラクションがみえてきます。それは「細胞生物学」と言え、全身をめぐるホルモンなどの物質を考慮すると「生理学」に、薬物による介入を加えると「薬理学」になるわけです。
つまりヒトの体はミクロからマクロまで連続したものであり、「○○学」などと縦割りにすることはできません

そしてほとんどの教科書、それも各分野の権威と言われるような名著ですら、そうした大局観を持ち合わせていないものが大半です。
洋書では各分野を有機的に繋ぐ視点で書かれたものもちらほらありますが、和書では非常にまれです。

そうしたラインナップの中で、本書は頭一つ抜きんでていると言えます。
ある組織・システム・臓器をみていくときに、分子レベル、細胞レベル、、、とさまざまな角度からオーバービューしてあり、人体の包括的・有機的理解を可能にしてくれます
私はこの本の存在に3年生の頭に気付き、以来基礎医学の期間はいつも参照していました。

難関の入試を乗り越え大学に入ると、一度力が抜けてしまいます。
学びたかった医学とは異なる教養科目も半強制的に勉強させられ、学習への意欲が下がるのが大学に入って1~2年のうちによくあることでしょう。

しかしこの本は基礎的な医学がいかに臨床につながっているか、各分野が有機的に連続しているかを教えてくれます。
イオンチャネルだって、重層扁平上皮だって、みんな臨床へつながっていきます。

重い本ですが、これ1冊で全分野が済むというのも優れたポイントです。
読み切れない分厚い本を何冊も買って腐らせてしまうより、基礎医学の間に繰り返し繰り返し本書を活用する方がずっと力が付きます。
解剖学の講義と、薬理学の講義が、どんどんとつながっていきます。
講義で学ぶたびに該当箇所や周辺知識を読み返せば、結果的には何度も復習することになり(それだけ各分野の講義に重複が多いということでもあります)、ますます知識は有機的に繋がっていきます。学べば学ぶほどそのバックボーンにあるつながりを感じ、知識の蓄積が楽しくなってきます。

まとめ

だらけがちな医学部低学年時代に、コツコツと知識を有機的に繋げることが出来た人は、医学部高学年~研修医~さらにはその先に至るまで、知識が大きく飛躍します。人体に起こる現象を、丸暗記ではなく基礎医学的裏付けを持って理解することが出来るからです。
そして本書は少ないコスト・ほどほどの努力でそれを可能にしてくれる、私好みの高コスパ本です。
もしも基礎医学の本は1冊しか買えない、という状況ならば迷わずこの1冊を私は選びます。医学生の方はぜひ参考にしてみてください。

※医学部生活が後半にさしかかり、臨床医学の講義が始まったらこちらも参考になります↓

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