ぶっちゃけ! 眼科の人間ドック

さっそく眼科領域の質問があったので、取り扱ってみようと思います。
表向きなきれいごとは省いた、現場のぶっちゃけトークです。
ちょっと難しい話も入っているので、最後のまとめだけ読むのもアリです。

人間ドックの意義

火事は、大きくなる前に消すことができれば(=早期発見)被害が少ないです。起こる前に防げれば(=予防)さらに被害は少ないです。

人間の体も同じです。
病気を重症化する前に見つけることができれば(=早期発見)その予後は良好です。発症を未然に防ぐことができれば(=予防)さらに予後は良好です。
したがって生活習慣改善など、病気の「予防」に我々は努めます。

人間ドックは「早期発見」に重きを置いたシステムです。
症状が出て病院を受診したくなるよりも前に、病気を検出しようという試みです。

無症状で受診するということ

原則として、無症状での病院受診は患者にとって割高で不利です。
統計学では「検査前確率が低い」状態と言いますが、症状がない場合にあれこれ検査をしてもその検査の医学的価値は乏しいです。
価値の低い検査を受けても、そのリターンは少ないのです。
きちんと理解しようとすると数式が必要になるのでここでは避けますが、ざっくり言うと「健康な人の体温を一生懸命測っても意味がない」というようなイメージです。

ただしこれには例外があり「自覚症状が乏しいのに進行する病気、治療価値のある病気」では患者に大きなメリットがあります
たとえば膵臓がん。この病気は自覚症状が非常に出にくく、症状が出た頃にはもう末期がんであることが珍しくありません。そういった病気を早期発見することができれば、その検査には大いに意義があると言えるでしょう。
巨大企業アップルのスティーブ・ジョブズが、あっという間にこの世を去ってしまったのを覚えている人もいるでしょう。(まさしく膵臓がんでした)

人間ドックは、医療機関にとってドル箱

ちょっとダークな話です。
医療機関は基本的に、サービスの料金(診療報酬)を国に決められています。売れ筋商品を値上げし収益を上げる、ということができない業種です。

しかし人間ドックは「治療」ではないため、価格を医療機関独自に決めることができます。
荒っぽい言い方をすれば、医療機関にとって「言い値で商売ができる数少ないドル箱」の側面があります。
オプション検査など、検査好きの国民性を利用して医学的妥当性を欠くプランを押し出し、収益を上げようとする医療機関もゼロではありません。
国民の健康に寄与する人間ドックですが、裏の側面もあるわけです。

眼科の人間ドック

病院やクリニックにより項目は異なりますが、眼科では視力・眼圧・眼底検査はほぼルーチンに行います。
そして眼科医の本音ですが…眼科の人間ドックの価値は「緑内障の早期発見」ただこれだけに尽きます。
それ以外の臨床上問題となる病気は、見にくさ等の症状を伴うため人間ドックで見つかる前に患者本人が病院へ行きます。たまたまドックで見つかった自覚症状が出ない程度のものであれば、治療しませんので病気が見つかっても意味がありません。

緑内障だけは ①早期には症状が出ず ②知らずに放置すると進行して取り返しがつかなくなる ③早期に治療を始めると重症化するのを抑えることができる という、早期発見の効果が非常に大きい疾患です。
毎月数百人単位の眼底検査をしていますが、ときおり発見します。「この段階で見つかってよかったね」と、心の底から思う瞬間です。
日本の大規模研究で「40歳以上の5%が緑内障」というデータがありますから、その有病率は決して無視できません。

また個人的には視野検査やOCT検査などのオプションは不要と思います。これらの検査をしなくても、治療介入が必要になるレベルであればルーチンの眼底検査でひっかけることができるからです。

まとめ

・基本的に無症状で病院を受診するのは、コストパフォーマンスが悪いが・・・
・眼科ドックに関しては「緑内障の早期発見」という大きな意義がある(というかほとんどそれしか意義がない)
・オプション検査は不要 医療機関の金づるになるな



コメントを残す